グロースハック(Growth Hack)とは、成長を目的とした戦略のことを指します。
例えば、A/Bテストで、
「どちらのデザインが、よりコンバージョンが高いか?」
のテストを高速・継続的に回すこととか、いろいろな手法があります。
日本でグロースハックという言葉を使うと、もっとコンサル的な内容やAARRRモデル、SWOT分析、PEST分析などについてばかり言及されますが、もう少し深く、具体的にこの記事では初心者にもわかるように解析をしたいと思います。
AARRRモデル、SWOT分析、PEST分析などついては、後日、また別の記事で解説をいたします。
グロースハック(Growth Hack)とは?
Growth=成長
Hack=たたき切る、切り開く
コンピュータでハッキングという言葉が使われますが成長をハックする、分析や解析、熟考をして企業や製品をより成長させるという目的・意味合いです。
有名な事例としては2007年のアメリカ大統領選挙のオバマ候補のメルマガ登録ページにアクセスする度にwebサイトのデザインを変えて表示(A/Bテスト)し、どのデザインが一番良いかを検証しました。
選挙中A/Bテストを何度も繰り返した結果、メール会員数が288万人増加し、寄付金は60万ドル(7000万弱)増加したようです。
日本ではクックパッド、Pixivなどが有名ですね。
グロースハッカーのルーツはエンジニアです。エンジニアであって、データサイエンティストでデザインフリークでマーケターなのです。頭でっかちではなく、統計学的背景やエンジニアリングについても理解した上で、マーケティング的素養も求められます。
今どきのマーケターに求められるのは、安定した大企業の売り上げを前年比1%増加させるスキルではなく、リソースのほとんどない状態から、全く新しいブランドを作り出すスキルです。そういった意味では、マーケターとエンジニアとデータサイエンティストとデザイナーの垣根はなくなってきているのかもしれません。
グロースハックでなにをするのか
例えば目的であるサービス成長への課題はサービスによって大きく異なります。改善点の仮説設定のセンスも求められるでしょう。
ウェブサービスやアプリの場合はシステムを改善する必要が出てくる可能性もあるため、プログラミングの知識が欲しいところです。また、運ではなく、データを元に成長をハックするため、マーケター的知識よりもデータ分析や数学の知識があると良いと思います。
サービスを作る
仮説検証をする
改善する
これを高速で回すのがグロースハックのひとつです。
A/Bテストをしたからグロースハックではありません。
分析を元に、ページのUI(ユーザーインターフェース。ボタンの大きさやレイアウトなど、表示や入力に関わる操作感や画面構成の総称)変更を試す必要があるならそれを実装する。ユーザーを最初に誘引するページの最適化が必要だったり、サーバーのアップグレード、キャンペーンやセール、イベントの実施など、成長につながることは全て行っていきます。
グロースハッカーは、伝統的なマーケティング戦略を放棄し、検証、追跡、測定が可能なものだけを用います。彼らの武器はCMや宣伝や資金ではなく、電子メール、チャット、PPC(ペイパークリック)、ブログ、プラットフォーム、プログラミングです。そうやってユーザーと成長とを追跡していきます。
A/Bテストはよく引用されますが、短絡的に半年間のデータではA案のサイトデザインの方がuserのコンバージョンが高いという結果が出たが、より長いスパンで観測してみたら、最終的にはB案の方が伸びていたという研究結果もあります。どこまでのサンプルで判断するのかというのも難しい問題でしょう。データを疑う、検証方法を疑うということも、常に意識してください。
より具体的に
まず優れた製品を構築します。
次に、例えば、招待制で提供することで関心を盛り上げる。ユーザーが新ユーザーを招待できる人数を段階的に増やしていく感じですね。
離れ業の一つではありますが、招待制というのはプレミアム感を醸し出されます。サービスが実際より人気と活気があるように見せるために、数百の偽プロフィールを作っているところもありますね。人だかりは人だかりを呼ぶというのを利用しているのでしょう。
その上で、製品を使えるサービスを一つに絞り、そのサービスの成長に便乗するというのも手です。まず小規模な集団向けにサービスを立ち上げ、その市場を掌握してからウイルスが拡散するようにサービスを拡大していく。
あるいは、サービス上でクールなイベントを開催して最初のユーザーを巻き込む。
影響力のあるアドバイザーや投資家を引き込んで、その財力ではなく支持者や名声を利用する。
いろいろなことが考えられるでしょう。
顧客を引っ張りこむ
かつて、すごいアイデアを提供すれば、それだけで人は飛びつくと考えられていました。しかしのちに、人が自発的に来ることは期待できず、こちらから引っ張りこまなければならないことに気がつきます。
事業を成功させて収益を上げるためには、マーケティングの方法を、潜在顧客の購買行動プロセスに合わせる必要があるわけです。
誰のための製品なのか?
なぜユーザーがこの製品を使うのか?
なぜ私はこの製品を使うのか?
この製品を購入した理由は?
なぜ知人に紹介しようと思わないのか?
どんな機能が足りないか?
長所は?
すべての人へではなく、ふさわしい人へぶっ刺さることを、脳から血が出るくらい考えて、分析して、検証してください。
クチコミは運ではない
グロースハッカーと、クチコミを利用しようとする一般マーケターと異なるところは、グロースハッカーはクチコミを成り行き任せにはできないと理解している点でしょう。
顧客がこの製品を話題にする理由はあるだろうか?
この製品には顧客が人に勧めたくなるような工夫がしてあるだろうか?
そもそもこの製品には話題にするだけの価値があるだろうか?
そういうことを、データ的、数学的な側面からも考えていきます。
クチコミが生まれるのは運ではありません。クチコミが生まれないのにも、理由があるのです。
クチコミは製品やサービスの後からついてくるものではないのです。製品やサービス自体はな共有せずにはいられない価値がなければならないわけです。
ブランディングに金はいらない
グロースハッカーは、ブランディングのために全国ネットのテレビ番組での製品露出の権利を買ったり、セレブに金を払ってサービスを利用してもらったりはしません。その代わりに、こうした「ソーシャルカレンシー」を無料で獲得する方法をまず考えます。
何かを拡散させるための重要な要素の一つは、「人の目に触れること」ですよね。
ユーザー登録をした当日に5~10人を自分からフォローしたユーザーは定着率が高いというデータもあります。
このような事実に基づいた戦略をとっていくために、膨大な知識も必要なのです。
最初の顧客を手に入れる
サービスをリリースしたときにまず直面する問題が、一番最初の顧客を手にすることでしょう。
最初のユーザーを獲得する方法は沢山あります。
例えば、潜在ユーザーが訪問しそうなウェブサイトにメールするとか。自己紹介し、製品について説明し、そのサイトで製品を紹介すべき理由を説明したりもできます。
あるいは、自分でハッカーニュース、Qiita、note、Quora、reddit、mediumなどに投稿するのも手でしょう。話題になっているトピックについての記事を自社サイトのブログに掲載し、間接的に読書を製品に導く戦略です。
あるいは、クラウドファンディングサービスのキックスターターでプロジェクトでプロジェクトを立ち上げ、潜在ユーザーに受けそうな特典を用意する。(これなら同時に潜在ユーザーとチャットできます)
潜在ユーザーを1人ずつ見つけ出し、無料あるいは特典付きでサービスに招待する。
これらの方法は創業者が短いメールや文章を書くだけで始められるのです。製品が本当にアプローチ先に合ってさえいれば、顧客は積極的に話題にします。
既存の方法を追うだけではだめ
データからなにがわかるのかを分析し、そこから考察する思考力。そして、新たな検証をする発想と実行、企画力などが試されるエンジニアであって、データサイエンティストでデザインフリークでマーケター、それがグロースハッカー。
やること、多いですよね……