あなたがどの研究を信じているか、あるいはどの分野にいるかによっても違いはありますが、どこにいようが、新しい顧客を獲得することは、既存の顧客を維持するよりも25倍もコストがかかると、ハーバードビジネスレビューで言われています。
このことについては、AARRRの説明記事でも少し触れました。
既存顧客はあなたとの信頼関係がすでに確立されているため、再度製品を購入してもらえる確率が高いのです。したがって、「見知らぬ人」よりも、以前に獲得した顧客にクロス/アップセルまたは再販売する方がはるかに安価になります。
これは理にかなっています。実は、時間とリソースを費やして新しいクライアントを見つける必要はないのです。すでに満足しているクライアントを一人一人を大切にしていくことの方が重要だったりします。
Bain&Company(ネットプロモータースコアの発明者)のFrederick Reichheldが行った調査で、顧客維持率が5%増加すると、利益が25%から95%増加することが示されています。研究結果として、証明もされていることなのです。
結論
適切な顧客を維持することは価値があります。 あなたの会社が顧客を維持しているかどうかを測る指標の1つは、顧客の解約率です。
しかし、顧客の解約率をどのように利用していけばいいのでしょうか。
このマーケティングの概念をより理解するために、ハーバードビジネススクールの上級講師であり、HBRのGo To MarketToolsの著者であるジルエイブリーの話を紹介いたします。
顧客解約率とはなにか
顧客解約率は、ある期間に会社との関係を終了した顧客の割合を測定する指標です。
解約率は、通常は業界と販売している製品に応じて、月、四半期、あるいは年ごとに測定されます。多くの企業は年ごとに測定しますが、ジムやキャリア、サービスなどは月毎に維持率を調べます。
多くの企業役員たちは、顧客の解約率ではなく、顧客維持率の方に目がいきがちです。どのくらいの顧客がまだ残っているかということですね。明るいデータを見るか、暗いデータを見るかの違いで、内容としては変わりはないですが、近年では解約率に注目する傾向が強いようです。
解約率を分析するのはマーケターではありません。むしろ投資家がやります。それにより、投資先の企業が健全かどうかを測ることに使うのです。
企業はどのように使うのか
もし顧客維持に興味があるなら、なぜ我々のサービスを解約するのかについて深く理解する必要があります。解約率の変化は、企業がうまくいっているか、いっていないかのシグナルになります。
より多くの顧客、または加入者があなたの会社や製品との関係を断ち切っていることがわかっているとき、マーケティング戦略または顧客サービスアプローチを改善しなさい、というのがこの考えです。
顧客セグメントごとの解約率を見ると、どのタイプの顧客が解約リスクにさらされており、どのタイプの顧客がアプローチを必要とするかがわかるでしょう。
具体的に
マーケティングマネージャーは通常、18~25歳の顧客のうち、今月何人が解約したかなど、セグメントレベルで確認します。
より洗練されたデータを豊富に持っている企業は、個々の顧客レベルでその数字を調べ始めています。ビッグデータ時代ですね。
実際、ビッグデータ時代の到来により、企業は解約率に対してより適切かつ正確に分析し、対処することが可能になっています。
では、ボストンを拠点とする企業であるHubSpotを例にあげてみましょう。
こちらの企業は、中小企業を相手に「インバウンドマーケティングソフトウェアツールを提供し、解約の見込みがあるお客さんをWebサイトに引き連れます。
同社のソフトウェアはクラウドを通じて顧客が利用できるため、顧客によるツールや使用状況をリアルタイムで追跡できます。
これにより、2008年に経済が崩壊し、会社の解約率が急上昇したとき、HubSpotは解約データを深く掘り下げて分析し、どの顧客がどのタイミングで離れる可能性が高いかを計算できました。 その分析を利用して、会社側は、解約の疑いのある顧客に対し、追加のサービスを提供したりなどし、対処することができました。
どうやって計算するのか
解約率は、シンプルに顧客が企業から離れた割合を示すものなので、計算に関しては非常に単純です。
一定の期間中に会社を辞めた顧客の総数を、期間の初めの顧客の総数で割ったものです。
解約率 = 一定の期間中に会社を辞めた顧客の総数 / 期間頭の顧客の総数
ただ、これは何が起こったのかということしか計算できません。これが全てではないので、注意しましょう。
この計算をするときにマネージャーが犯す間違い
顧客の解約率を見るときに企業が犯す4つの間違いがあります。
1つ目は、「解約率を機会としてではなく、与えられたものとしてとらえること」です。
HubSpotのサービス担当副社長であるJonahLopinは、同社の顧客幸福度指数の開発について次のように要約しています。
「解約率の上昇が見られるまでには、顧客が解約したタイミングから6か月または8か月後かかります。解約が顧客満足度を測る唯一の尺度である場合、常に6か月遅れた計算しかできないということです」
HubSpotや他の多くの企業は、解約を予測するための分析と、それに伴うシステムの開発してきました。最も革新的な企業は、解約率分析を単に行うのではなく、顧客を失うことを先取りして対処する機会として使用しています。
企業が犯す2つ目の間違いは、解約を行動の指標としてではなく、単なる数値または指標として見ることです。
マネージャーが自問自答すべき質問は、
- 顧客の解約を引き起こす会社として原因はなにか
- 顧客が解約するためになにをしているのか
- どうすれば顧客との関係をよりよくし、解約が起こらないようにすることができるか
ここから求められた数字の背後にあるものを分析すると、これから何をすべきかの判断に役立つでしょう。
企業が犯す3つ目の間違いは、多くのマーケターはマジックナンバーがあると信じていることです。
データから得られる真実は、ビジネスモデルによって大きく異なり、企業がどれだけ迅速かつ効率的に顧客を獲得できるか、そして短期的および長期的にどの程度収益性の高い顧客であるかに大きく依存します。
解約率が高いにもかかわらず成功するビジネスモデルもあれば、解約率の低いビジネスモデルで失敗するビジネスもあります。最高のマネージャーは、特定の数字に固執するのではなく、昨年の解約率を見て、どうすればもっとうまくできるかを自問自答します。
企業が犯す最後の間違いは、解約率が高い理由は顧客獲得の努力が不十分だと思い込んでいることです。
これは、価格を最初から大幅に釣り上げ、クーポンなどで値下げをする業界でよく見られます。
この場合、顧客は他のより都合のより他の製品やサービスを見つけるとすぐに解約に至ります。これは、グループクーポンを利用したビジネスモデルで多くの人が指摘した問題でした。この方法は、新規顧客を獲得するのに効果的な可能性はありますが、大幅な割引が提供されなかったときに購入が促進されず、解約して他のサービスを利用してしまうというケースが目立ちます。
顧客の維持に問題があると仮説を立てる前に、顧客獲得に問題があるかどうかを検討しましょう。 前もってサービスを提供したい顧客について考え、適切な顧客の獲得に集中する。顧客はあなたの提供する価値を受け取り、一方であなたもあなたにとって価値のある顧客を呼び込み、維持していくことができるでしょう。