「これからの学び教育のDX」イベントレポート

10月15日(土)北海道江別大麻東地区センターにてトークイベント「これからの学び教育のDX」を開催しました。

ゲストは東京学芸大学大学院・准教授でスタディサプリ教育AI研究所・所長の小宮山利恵子さん。

本記事ではトークイベントの要点をまとめていきます。

会場には道内から続々と参加者が。
教育関係者だけではなく、学生、保護者、行政職員など様々な方が小宮山さんの講演に耳を傾けます。

社会、人材、学びの変化

コロナ禍がきっかけでGIGAスクール構想が前倒しされ、遅れていた日本のオンライン教育が一気に拡大しました。

それにより、学校の先生の役割に変化が求められていきます。

教師の役割が「コーチ=伴奏する人」へ

ICT教育の普及により「全員に一律の授業」から「個別学力に合わせた学習」に変化していきます。

これからの時代、先生に求められるスキルは「観察力」です。

ICTを活用することで子供たちに向き合う時間を確保できるようになり、生徒の心身の健康状態や家庭環境、個性に目を向けることができるようになります。

先生の仕事はティーチングからコーチングへとグラデーションの様に変化していきます。
そのために観察力を養うことが必要です。

テクノロジーとの共存は避けて通れない時代

今から約60年前に第一次AIブームが始まりました。今は第三次AIブームとして注目を集めています。

機械学習・ディープラーニングが発達し、数年前にはAmazon Goと呼ばれるレジがないスーパーも話題になりました。

仕事における人とAIの付き合い方

自分の仕事がAIに奪われてしまう。そんな不安を抱えている人も多いはずです。

仕事におけるAIとの付き合い方について、鍵を握るのは「創造力」と「共感力」です。

創造力と共感力が必要とされない仕事はAIにとって代わられ、逆に創造力と共感力が必要な仕事は人がいないとできない仕事として生き残る可能性が高いのです。

これからの働き方の変化

人生100年時代の中で、私たちは70歳から80歳くらいまで健康に働ける可能性が出てきています。

しかし、企業の平均寿命は25年。

人間の寿命と企業の寿命にギャップがあるため、ほとんどの人は終身雇用ができなくなることが予測されます。
そして、兼業・副業・フリーランスといった働き方が注目される時代です。

これからの社会では「論理力」「創造力」「回復力」「協働力」、いわゆる21世紀型スキルを身につけていく必要があります。

自ら考え、創造し答えのない問題に納得解を導きながら生き抜く力。
他社と協働しながら創意工夫をし、新たな価値を創造できる力。

これらの力を養うことが、答えのない変化の激しい時代を生き抜くために求められます。

ICT教育の拡大、教育改革で変わる学校教育

ICT教育によって5つの変化が予測されます。

1.個別習熟度別学習
2.評価軸が変わる
3.学校や先生の役割が変わる
4.学校内外で地続きの学びができる
5.教科学習の授業時間数が減り、その分探究学習の機会が増える

また、これまで日本で行われてきた「知の深化」だけではなく「知の探索」を掛け合わせた両利きの学びも重要です。

知の深化とは、一つの正解に素早く辿り着くために繰り返すドリル学習のことを指します。
失敗が少なく効率的な学習方法として教えられてきました。

知の探索とは、失敗が多くて一見無駄に見える探究学習のことを指します。
死ぬまで学び続けられる生涯学習の力が養われます。

従来の学校教育では「知の探索」に関わる能力がほとんど養われないというデータがある中で、自分が疑問に感じていることを追求できる「知の探索」は答えが一つではない時代に欠かせません。

また、五感を使うことで創造力を育むアナログ×リアルな学び、0から1を生み出す起業のマインドを育むアントレプレナーシップ教育も日本で注目されています。

教育領域でDXを成功させるためには

ただ一人一台タブレットを配って終わることがDXではありません。
教育のDXを推進するためには以下の様な総合的な構造改革が必要になります。

1.先生のマインド・スキルのアップデート
2.学校・授業の再定義
3.働き方の見直し

親は子供に何ができるか?

本来3時間でお話されている内容を約1時間にまとめてお話してくださった小宮山さん。
参加者には小中学生のお子さんがいる親御さんも多い中、最後は親が子供に何ができるのかを教えてくださいました。

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これからの時代は、良い大学を出て一流の企業に就職をすれば一生安泰を得られるような無難な選択がない時代です。

親ができることとして、子供自身が自分の好きを見つける機会を増やしそれを育てる環境を準備すること。

子供の存在を認め、コンフォートゾーンを抜ける体験をさせること。

子供の頭の中に???が浮かぶような体験を沢山させること。

小さな選択肢を持たせ自立性を養うこと。

この繰り返しがこれからの時代を生き抜く力として必要です。

トークセッション

講演後、SUNABACO代表取締役 中村マコトモデレートのもと、小宮山利恵子さん、星よしあきさん(道議会議員)湯村翼さん(北海道情報大学)、中島圭一さん(江別市教育委員会)によるトークセッションを開催。

ITの専門家であるSUNABACO代表中村からは、ICT教育で学びの経路を固定化せずに済むことやデジタル・ディバイドが地域の未来を左右すること、ネットを安全に使うことについてお話をさせていただきました。

ゲストの中島室長・湯村准教授からもICTでギフテッドの子たちが活躍しやすい社会、情報を発信することの重要性について意見をいただき、地元の教育関係者の皆さんとの熱いトークセッションが繰り広げられました。

参加者からも時間が足りないほど沢山の質問が上がり、今後も江別市のポテンシャルから目が離せません。

教育を変えることで地域の未来が変わり、子供も大人も一体となり学び続けていくことで地域が豊かになっていく。
答えがひとつではない混沌とした社会を生き抜く中で、不安だけではなく希望が感じられるトークイベントでした。

■トークイベントアーカイブはこちら>>

ゲストスピーカー 小宮山利恵子氏
株式会社リクルート スタディサプリ教育AI研究所所長
国立大学法人 東京学芸大学大学院教育学研究科准教授(教育AIプログラム)

モデレーター 中村マコト 
株式会社SUNABACO代表取締役

トークセッションゲスト
北海道情報大学 湯村翼 准教授
江別市教育委員会 中島圭一 室長
道議会議員 星よしあき 議員

主催
株式会社SUNABACO

後援
北海道情報大学
江別市
江別市教育委員会