快適を捨て、旅に出よう。「天草で考える『ワーケーションとこれからの働き方』」イベントレポート!!

2022年8月27日にSUNABACO天草にて行われた、トークイベント「天草で考える『ワーケーションとこれからの働き方』」。

この記事では、そんなトークイベントの内容をお伝えするイベントレポートをお届けしていきます!

登壇者紹介

田端信太郎

#田端大学 塾長

https://twitter.com/tabbata

ゲストスピーカー

株式会社NTTデータ→株式会社リクルート→ライブドア→LINE→株式会社ZOZO(株式会社スタートトゥディ)という経歴の持ち主で、メディアのプロであり、コミュニケーション戦略のプロ。現在は、「オンラインサロン田端大学」塾長を務めつつ、多数の企業でマーケティング顧問を務めている。

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小宮山利恵子

“旅と学び”のプロフェッショナル

https://twitter.com/RiekoKomiyama

ゲストスピーカー

スタディサプリ教育AI研究所所長。国立大学法人東京学芸大学大学院准教授(教育AI研究プログラム)。1977年、東京生まれ。早稲田大学大学院修了。国会議員秘書になるが、ひとり親家庭で育った環境から「すべての子ども達に教育の機会を」という想いを胸に、教育領域に従事していくと決心する。
衆議院→ベネッセ→GREE→現リクルート | 東工大・ANAアドバイザー | 旅と学びの協議会理事

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猫山課長

半径5mの見え方を変えるnote作家

https://twitter.com/nekoyamamanager

ゲストスピーカー

保守的な金融機関で史上初の副業勝ち取った現役課長+令和2年7月代表取締役就任+アパート経営者+note作家のマルチタスク人
ご息女とその彼氏さんのエピソードに葛藤するツイートが最近話題を呼んでいる。

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植野直亮

GarrawayF ビジネスプロデューサー

https://twitter.com/naoaki5223

ゲストスピーカー

2004年トヨタ自動車九州入社、経営管理部に配属。経理畑プロ人材としてのキャリアを積み18年次世代事業室を立上げ。「もっと笑顔になれる未来づくり九州創生」を目指し、多様なバックグラウンドを持った方々とオープン&スピーディにアイデアをカタチにする仲間づくりの拠点として19年コワーキングスペース「Garraway F」を開設(現在は天神VIORO7階)。「協働協創の現場」のビジネスプロデューサーとして様々な方々と「幸せの量産」に挑戦中。

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中村まこと

株式会社SUNABACO代表取締役

https://twitter.com/nakamakoko

モデレーター

シリアルアントレプレナー・アクセラレーター・UXデザイナー
テクノロジストとして数々のスマートシティ、
シビックテックなど先進プロジェクトをリード。
日本最大級のプログラミングスクールSUNABACO代表として、
リカレント教育、次世代の教育に関わる。

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ある日放り出されるブロイラー社畜

ナカムラ

まずこれは田端さんの本からなんですけど、終身雇用と年功序列が約束されている時は、会社の奴隷でいて和を乱さないことが圧倒的に楽だったんですね。自分の仕事を聞かれたら会社の名前を答えればよかった。

田端さん

「社畜」なんて言いますけど、ブロイラーみたいなもんですよね。言えばご飯は一応もらえるけど、ずーっとその狭い中に閉じ込められている。でも、家畜の飼い方でもそれだとあんまり美味しくないとなって、そこから出されるようになりつつある。

ナカムラ

そうですよね。ずっと餌がもらえると思っていたところが。

田端さん

どうせ同じだけご飯もらえて、同じタイミングで食べられるって思ってたけど、飼ってる側も全員に食わせる飯もないからガラガラガラって開けてお前ら勝手にやれみたいな。笑

ナカムラ

そうなった時に僕らはどうやってキャリアをデザインしていけばいいんだろう、求められる人ってどういう人なんだろうっていうことを考えていかないといけない。

けれども、今までみたいに外に触れず言われた場所で大人しくやるってことでは不可能になってきているんですよね。

なぜなら、その前提にVUCAの時代というのがあって。

小宮山さん

コロナが急に出てきたりだとか戦争が始まったとかで、先行きの見えない混沌とした時代になってきています。そんな時代のことをVUCAの時代、というふうに呼んでいます。

先程田端さんが仰ってた終身雇用がなくなるっていう話で、終身雇用がある時は先行きが見えたんですよね。地図があって、この街に行けばいいとか、この武器を手に入れれば安全だ、みたいなのがあった。でも、今はもうそれがわかんない。この会社に入れば大丈夫だ、この大学に入れば大丈夫だ、とかっていうのが、全然無くなってると思うんです

アンコンフォートから、逃げない

ナカムラ

会社内にいると1日8時間以上同じ会社の人達と話をして、同じ考え方で「前例って〜」「新しくやることって意味あるの〜?」みたいなことを言われ続ける。

そして、そのままその会社に今まで通りの考え方で居続けたら、多分死んじゃうんですよね。それで、どうやって新しいものに出会うのかっていうと、旅をする。要は、自分の枠を広げるってことを大事にしないといけない。

田端さん

7月の終わりから3週間くらいアメリカをうろうろしてて、そのうち大半はキャンピングカーでやってたんですね。そうすると、主体的な発見というか、知の探索みたいなものがあって。

飛行機って、別に受け身で、寝てても勝手に着くじゃないですか。でも車は自分でアクセル踏んでハンドル切らないと動かなくて、かつ走ってると無意識にめちゃくちゃ色んなものが目に映るんですよ。

それで、今のってもしかしてUターンしてでも見るべきなんじゃないか、ってふうに、常に1日何時間もある種の意思決定をし続けている

それは今までの旅行とは次元の違う大変さもあったけど、達成感とか充実感みたいなものもあって。

息子2人とやっていたんですが最後に成田に着いたとき、長男が「この生活が終わるかと思うと寂しいね」みたいなことをぼそっと言ってくれて。

それはなんか、模範の感想ですよね。

ナカムラ

すごいのが、「気持ちは分かる。けど、何事にも終わりがあるんだ。パパの人生にも、お前の人生にもいつか終わりがある。だから尊いんだ」って田端さんが言ったんですけど、これってこの旅がなければ息子さんの中で広がらなかったものなんですよね。まさに旅と学びだなと思うんですけど、小宮山さんどうでしょう?

小宮山さん

私の子供は今中学3年生なんですけど、ひと頃は本当に2人で旅してて、それもメジャーなとこじゃなくてルワンダとか、ドバイとか、インドとかで、「なんでお母さんはまともなところに連れて行ってくれないんだ」っていう。笑

なぜかというと、「疑問符をどれだけ多く持てるか」っていうところを私は旅の中心に置いているから。それは、実はコンフォートゾーンを抜けるっていう話なんですよね。家と会社とか塾、学校の行ったり来たりではなくて、違和感を感じるところに連れて行くためには、本人が知らないような国に連れて行くのがいいのかなと思って。

ナカムラ

今小宮山さんが言われたことってこれからの社会ではすごく重要で。

コンフォートゾーンって自分の会社で前例があってみんなに責められなくてってことで、そこから出るためには快適じゃない、いわば、いてててってなるところに行かないといけない

田端さん

それで言うといいなと思うのは、物理的に移動しちゃうとアンコンフォートなところだからって逃げられないんですよ。ネットで不愉快なことがあったらブラウザー一瞬で閉じて終わりだし、メタバースだって一瞬でゴーグル外せば終わりじゃないですか。だからこそ、物理的にアンコンフォートなところに行って、いやこれはにっちもさっちもいかないな、という思いをする。

ナカムラ

自分が今コントロールきかないところというのが大事で、植野さんもそうですよね。未来を、新しいことをつくる上ではコントロールのきかない大変なことがたくさんある。

植野さん

我々の会社は自動車会社なので車を作る工場っていわゆる田舎にあるんですけど、天神のど真ん中にコワーキングスペースを作ってるんです。その距離感が大事で、普段の仕事で気づいたことと、外で気づけることでは学びの種類が違って、それはひとつの旅というか、体験ですよね

ちっぽけな自分に気づく

ナカムラ

自分を変え新しいものに影響されるってことをしていかないといけない中で、魂に刺さる体験がこれからめちゃくちゃ大事だと思っています。

魂に刺さる体験って何かっていうと、たとえば焚き火とか、キャニオニングとかSUPとか、狩猟とか、そういうものになるんですが、これは快適じゃないことなんですよね。小宮山さんとか結構そういうことをされてると思うんですけど。

小宮山さん

最近ダイビングを始めまして。沖縄でよく潜ってるんですけど、どうやら天草の牛深でも潜れるって話を聞きまして、明日潜りに行くんですけど。笑

ナカムラ

僕もダイビングするんですけど、ダイビングの好きなところは自分のちっぽけさに気づけるというか。

コンフォートゾーンを作っていくと、人間は驕っちゃうんですよね。そうすると、基本的に能力は落ちていく。自分ができないと思うから頑張るわけですから。

そんな中で、ダイビングやると俺ってちっぽけだなって思う。

小宮山さん

ちっぽけだと思うし、自分って出来ないんだって思う。うわ、これ出来ないんだ!みたいな。

田端さん

ヨットを習ったときに、大学生のヨット部みたいな連中から怒鳴られまくって、その時はもう結構いいおっさんになってたんですけど、それはそれで新鮮でしたね。絶対インターンで来たら「何やってんの!」って逆のこと言ってんだろうなって。

小宮山さん

ダイビングもやっぱり生死が関わってくるので、私もインストラクターに怒られました。もっとゆっくり上がらなきゃ駄目だ、とか。

ナカムラ

そういった、やっぱり自分ひとりでは駄目だとか、そういうことを体験することが、実は東京のビジネスパーソンにこれからめっちゃうけるんですよね。だから今日登壇いただいてる皆さんとかには、めっちゃ多分共感して面白いじゃんって言っていただいているわけです。

綺麗な海があってそういうアクティビティができてって、天草の人たちは当たり前だと思っているかもしれないけど、こうやって東京から来た人たちがすげえって言っていくことが重要なんですよね。

仕事と遊びの混ざりあう黄昏時

ナカムラ

トヨタ自動車の豊田章男さんが、外に出ても評価されるプロであれっていうことを言っている。

植野さん

企業人って自分の役割が決められているから、自分なりのコンフォートゾーンを作って、その部署のエースとかになっていくともう居心地よくてしょうがない。でも、やれることってすごく限られていくんですよね。

だから、他の地域の新しいことを一緒に学ぼうよって仕掛けをしたりしていて。

ナカムラ

まさに、トヨタ自動車九州さんとぼくらが一緒にやらせてもらっているDX人材育成セミナーっていうのがそうですね。

当たり前だと思っていたことが外に触れることで変わってくるっていう体験づくりを結構一緒にやっています。

そういった交流のできる場を、天草でもこれから本格的にオープンしていきます。職場以外のところに外から来て学びがあってアクティビティができてって、実際に体験されて猫山さんどうですか?

猫山課長

勤め人の方は毎日毎日似たようなことを繰り返して仕事をしているので、どうしても煮詰まっていって固くなっていきます。それをワーケーションでほぐすっていうのもすごく大事だと思うのですが、一番大事なのは自分を俯瞰的に見られるということだと思うんですよね。

ナカムラ

そうですよね。自分のことって、他の人と交わって初めて客観的に見られる

猫山課長

まず日常の自分があって、そしてそうじゃない俯瞰的な自分がある。それらが昼と夜の合間の黄昏時のように混ざり合う瞬間に、ぱっと何かが見えるんだと思います。

やっぱり日常の中では駄目だし、かといって遊んでるだけでもだめで。こういった仕事と遊びが混ざったようなところに来たときに、魂というか、視点が高くなってぱっと自分が俯瞰的に見える。そうなると新たな自分の進む道とか仕事の仕方とか、人生とか、そういったものが見えやすくなる。そんな効果はすごく感じましたね。

ナカムラ

それは経営判断を求められたり、プレッシャーの中にある経営やマネジメントに携わっている人にはすごく大事なことだと思うんですけど、そんな機会が得られることが天草にはすごくあると思います。

小宮山さん

そう思います。かつ、これまでは管理職って言われる人たちが決断すればよかったけど、これからはトヨタの社長が仰っていたように一人ひとりがプロになる。プロになるってことは、一人ひとりが決断しなければいけない。そういう場面がたくさん出てくる。

それを前提としたときに、天草はほんとうに7, 8回来てますけど、来るたびに新しいものに出会えるんですよね。

外から来て楽しめるように、交通を設計する

ナカムラ

天草って、東京とかだと当たり前にあるタイムズレンタカーの時間内シェアとかないんですよ。結構レンタカーを借りるにはハードルが高い

けれどもエスタブリッシュメントの人たちが来ると、彼らは1週間くらい滞在して、天草のいいところを巡りながらワーケーションをするっていう目的を持っているから、土地に着いてMaaSがないというのは困るポイントになる。

そこで、ハブアンドスポークという考え方があって、まず拠点拠点を大きな導線で結ぶ。これは天草エアラインがあって、福岡から30分で来られて非常に強い。あとはそこからスポークが伸びるようなところをいかに整備するかがめちゃめちゃ大事だと思っていて。植野さんそのあたりどのようにお考えですか?

【編注】
MaaS:Mobility as a Service。あらゆる交通手段をひとつのサービスと捉えること。今回では、ワーケーション利用者に対してどのような移動体験が提供されるべきか?と考えること。
ハブアンドスポーク:車輪のホイールのように、中心部と、そこから広がる放射状の形態を指す。特に交通においては、ハブ同士が太く連携するイメージも持たれる。今回では、福岡と天草空港が空路で太くハブ同士つながり、天草空港からスポークとして様々な移動手段が持たれるイメージ。

植野さん

ハブで拠点の動きをしながら、あとは1マイルとは言わないですが、天草近郊の町中をシャトル便でオンデマンドで動けるようなものがあって、いろんな美味しいところに連れて行ってくれると多分めちゃくちゃ便利で使いやすいんだろうなと思います。

それから、外の人たちが乗る観光のためのインフラと、地元の人たちが生活する上で必要なインフラを両立しないといけない

おばあちゃんが病院に行くときに連れて行ってくれて、その後スーパーに寄って家に帰ってくれるとか、そんな移動のサービスがありながら、外の人が来たときには街に連れて行ってくれるようなものにうまくシフトする。そういうタイムシフトも含めて、サービスをうまく組み合わせるといいんだろうなと思っています。

ナカムラ

そうですよね。車一台がひとつの役割をするんじゃなくて、複数の役割をすることが必要になる。

そういうことをいかに外目線でMaaSを仕掛けていくかが、土地を消費しない観光をつくるためには重要だと思うんですよ。

(会場からの質問タイム)

質問者

今日は本当にありがとうございました。MaaSを考える上で、天草って実は東京23区の広さよりも広くて。バスなど色々なものをやっているのですが中々うまくいかず、そんな中で自転車の可能性をお聞きしたいなと思うのですが、いかがでしょうか。

猫山課長

この間、八代市でのお話にはなるんですが、サイクリングに誘っていただいて。半日回らせていただいたんですが、車だとただの通過する道が、自転車だと経験に、体験に変わるんですね。地元と変わらないような景色でも微妙に違うところを見つけるのが楽しかったりして。

自転車を推し進めていくというのは、そういった自転車のスピードだからこそ感じられる魅力を感じられることから、すごくその土地のファンを増やすことに繋がるんじゃないかと思います。

ナカムラ

我々はSUNABACO八代中心にサイクルツーリズムをかなりやっているのですが、実はサイクルツーリズムで大事なことは自転車の整備だけではないんですよね。先進地である、世界のサイクリストが行きたい聖地であるしまなみ海道で、自転車を整備するだけでは上手くいかないことがよく分かっています。

まず着いて自転車を組み立てられる場所があって、困ったら道具のサポートがあり、着替えができて、道を安心して走ることができる。さらに帰ってきてシャワーを浴びたあと、快適でサイクリストが集まるコミュニティーがあって、そこでしか食べられないサイクリスト向けの分かりやすい食べ物のコンテンツがある。しまなみ海道はそういった細かいコンテンツがものすごくあって、そういうものが積み重なってやっと観光になっているんですよね。そうやって、街がにぎわっていくんだと思います。

登壇いただいたゲストの皆さん、この度はありがとうございました!

トークイベントの内容は、SUNABACO公式Youtubeチャンネルでも全編公開中です。

気になった方は是非、こちらもご覧ください!