コーヒーを運んでいたら、途中でこぼしてしまった。
こんな経験ありませんか? 私は普段からコーヒーをよく飲むのですが、しばしばこぼしては、本を茶色に染めています。
運び方が下手だとか、うっかりしているとかで自分を責めたり、怒られたりしたこともあるはず。
しかし、コーヒーをこぼしてしまうことには、実は科学的な理由があったのです。
ある韓国の研究者が研究し、論文を提出しています。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2078152015300377
こぼれやすいのは、量が原因ではない
画像左:グラス
画像右:ワイングラス
それぞれにコーヒを注ぎ、スピードを変えて比較してみたようです。a,bは1秒間に2回振動、c,dは1秒間に4回振動させ、比較させます。
すると、1秒間に2回振動だとワイングラス(b)の方がコーヒーが激しく揺れるのに、1秒間に4回だとコーヒーカップ(c)の方が激しく揺れていることが画像からも分かります。
どうやら量の問題ではないらしい。
共振
物体には、一度力を加えると振動し続ける振動数があります。
これは、物体によってそれぞれ異なり、「固有振動数」と呼ばれます。
この固有振動数と、外から加える振動数が一致すると、大きく揺れる現象が起こります。それを「共振」と呼びます。
材料学や物理学の範囲になってきますね!
コーヒーの固有振動数は?
コーヒーの固有振動数を、機械でコーヒーを揺らして求めて得られたグラフが上の図です。
それを、フーリエ変換を行うと、bの振動数と振幅に関する結果が得られました。
振動数とはコーヒーをどれだけの速さで振るか、振幅とはコーヒーがどれだけパシャパシャするかを表しています。
グラフbでは、3.8Hz付近で振幅が最大になっているのがわかりますね。
つまり、コーヒーの固有振動数は3.8Hz。
コーヒーカップを持って歩くときの振動数
上の図は、コーヒーカップを持って、スマホを上に貼りつけて、x,y,z方向それぞれの加速度を計測した結果になります。
人の歩く振動数は2Hzです。
上から持つとこぼれにくい
では、振動数がわかったところで、どういう運び方をすればコーヒーをこぼすことがなくなるのでしょうか。
解決案として提案されたのが、コーヒーカップの持ち方を柄を持つのではなく、覆いかぶさるようにもつという方法。これだとこぼれにくいらしい!
これを、論文では「Claw-hand posture」と呼んでいます。
他の飲み物では、また違うよ
持ち方を変えるだけでこぼれにくくなるというのは初耳だったのではないでしょうか。
今回の実験ではブラックコーヒーを想定していますが、エスプレッソ、他の飲み物、牛乳や紅茶などでは条件が変わってくるので注意してください。
具体的には、液体の密度と表面張力が異なるため、液体の固有振動数が変わり、共振する振動数が変わってくるのです。
つまり今回はたまたま、コーヒーの固有振動数と人間の歩き方がマッチしてしまっていたために、よくカップから溢れるということでした。
データを見ると、意外なことがわかりますね。
参考:http://honeywaffle.net/science/coffee-spilling/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2078152015300377