SUNABACO DX人材育成講座10期発表会を開催しました!

2024年3月30日(土)SUNABACO今治にて
DX人材育成講座10期の卒業制作発表会が行われました。

回を追うごとにレベルの上がっているDX発表会、記念すべき第10回目の発表の様子をお届けします!

DX10期 集合写真

 SUNABACOのDX人材育成講座は、企業や行政において、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できる人材を育成する講座です。

現在、経営を取り巻く環境が急速に変化している中で、従来の取り組み方では変化への対応が間に合わなくなってきていることも多いのではないのでしょうか。DX化を取り入れ変化を起こそうとしても、システムを導入しただけでは上手くいきません。

 DX人材育成講座では、現場が抱えている問題の本質を捉え、その上で最新のテクノロジーの知見やツールを自ら扱い、問題の本質に迫り課題解決できるDX人材を育成します。

 今回も全国の参加者が共に学び、最後の2週間で卒業制作に取り組みました。これは、実際に制作チームメンバーが所属する組織や身の回りの課題を見つけ、現状よりも「より良く」改善するプロダクト制作を実施。その成果を、卒業制作発表会で発表いたしました。

 それでは、全6チームの制作をご紹介いたします!

株式会社SUNABACOの中村マコトと若林理恵子が審査員に。DXの専門家の視点からフィードバックが行われました。

①House Keeper Pro

 ハウスクリーニングソリューションシェアハウスにおける清掃スタッフからの報告を効果的に管理する為の解決策を、というテーマで「House Keeper Pro」というアプリを開発されました。

 顧客は全国18拠点にシェアハウスを管理しているオーナーで、彼の悩みは「清掃スタッフからの報告を見返せるようにしたい」との話で、現在のチェック及び管理方法は、運営のLINEの公式アカウントを通じて送信され、報告内容には清掃の入りの時間、清掃場所のビフォーアフターの写真、および清潔度合いのチェックリストが含まれます。しかし、膨大な量の画像と報告が管理され、必要なデータにアクセスするのが難しい状況でした。(画像毎月平均80枚✖️18ハウス=1440枚)

 この問題を解決するために、チームは清掃スタッフ向けの送信フォームを用意し、データを自動的に整理してGoogleドライブに保存するアプリ「House Keeper Pro」を開発しました。このアプリは管理しているLINEの画面から報告を完結できるため、使い勝手がよく統計データもグラフ形式で見ることもでき、報告されたデータはGoogleドライブのスプレッドシートにも記載され、過去のデータを一覧表示して見る事ができ課題も見つけやすくなります。

 また、画像報告用のフォームも用意されており、画像はGoogleドライブのフォルダに自動的に保存される仕組みです。このアプリを使用することで、これまでLINE内のトークルームに埋もれていたデータを、画像は階層分けされた指定のフォルダに、業務報告もスプレッドシートにて一覧表示され、切り分けて管理可能になりました。

 初めは「単なる業務効率化」だと思いプロダクト制作を行っていたが、課題の本質は「清掃の品質の保持」であることに気付きゴールを修正していきました。プロジェクトの成果に対するフィードバックはオーナー側、清掃スタッフ双方から好評で、Googleのサービスとの連携やAIを活用した画像認識などの可能性に期待が寄せられました。

【審査員からの講評】
作業内容が明確化されたことで、管理者だけでなく新規作業者にとっても何をすれば良いのかが分かるものになり、データをフィードバックすることで作業者の賞与アップ等の判断基準になり継続的な雇用の一因になる一方で、作業者が常に監視されていると感じる反面もあり「監視ではない、クォリティコントロール」に繋げれれば、より良いDX化に繋がるのではないでしょうか。

 

②みえるんです

 建設業を営む会社が抱える課題に焦点をあてた「みえるんです」というアプリ開発されました。

 顧客が抱える主な課題は、複数の現場を同時に回す中で、現場間の情報共有の不足と、現場からの情報が顧客に自発的に入ってこないことでした。その為、人員調整や天候による現場調整、また現場進捗に至るまで、顧客がヒアリングを促した上で指示を出したり電話応対を行う必要があり、これが身体的、精神的負担やコスト増加につながっていました。その他にも、機材確保におけるトラブルなども発生し、何より顧客自身も一つの現場責任者として現場で作業している為負担は大きくなります。

 開発チームは、これらの課題を解決するために「見えるんです」というアプリを開発しました。このアプリは、現場作業員が現場の予定や連絡事項、機械の使用状況などを簡単に確認できるようにするものでした。初期の段階では、天候による作業変更の指示や、機械のスケジュール確認をアプリ上で行うことができるようになりました。

 プロジェクトの進行に伴い、アプリの機能拡張が行われ、スケジュールの入力や機械の管理がより効率的に行えるようになりました。このアプリの導入により、現場での指示や電話連絡が減り、作業に集中できるようになったほか、コスト削減やトラブルの減少などの効果が得られました。

 今後は、機能の追加や改善を通じて、現場のニーズにより適した形でアプリを進化させていく予定です。顧客の会社は代々続く会社であり、彼の思いや責任を背負って、時代に合わせて変化していく姿勢が見えました。

【審査員からの講評】

 どの現場においても、一番の問題は、電話による同期コミュニケーションで時間を奪われ、現場によっては危険な作業をしている際の電話が減少するというだけで、安全確保にも繋がります。この、非同期コミュニケーションが文化として定着すればみんなが助かる一方で、急を要する際には電話での連絡が早いというのは事実で、その機能も残していることはとても大事だと思います。全員が「見える化」されると「気付き」に繋がり、経営陣だけの管理ではなく、社員教育にも発展できる機能になると感じます。

③スマりん~スマートりんご出荷~

 フルーツガーデンをご家族で経営されており、果樹栽培から販売加工まで一貫して行っている中で、今回は出荷現場で抱える課題に焦点をあてた「スマートりんご出荷=スマりん」というアプリを開発されました。

 インタビューを実施していく中で明らかになったのは、家族間で出荷規格の共通見解がないことにより発生する、家族間での摩擦です。出荷作業では、秀品とB級品の選別が行われますが、一人が仕分け作業を行ったとしても、別の人では基準が異なるため、再仕分けを実施することになっていました。これを解決するために、出荷基準を可視化し、共有するアプリ「スマりん」が開発されました。このアプリは、30種類もあるリンゴの出荷規格を写真データで判定基準を視覚的に把握し、作業効率を向上させ、チーム内の喧嘩を減らし、コストを削減します。

 具体的な効果としては、再選別にかかる時間やコストの削減、共通認識の確立によるチーム内の円滑な作業、選別における無駄の削減による利益増などが挙げられます。また、アプリはリンゴ以外の作物にも応用可能であり、将来的には収穫判断にも利用される予定です。

 今後の展望としては、判断精度の向上や品種ごとの判断基準の設定、収穫判断への応用などがあります。これにより、出荷作業の標準化が図られ、これまでは、繁忙期に雇ったアルバイトの作業員では任せる事ができなかった出荷作業を任せるようになることで、経営者であるご家族がより重要な業務に集中できることが期待されます。

【審査員からの講評】

  判断基準となる現物を、選別作業の前にサンプルとして設置しておけば、わざわざデジタル化する必要性はないかもしれないが、作業をデジタル化し、データを収集していくことで、選別をより精度の高い機械での分別に移行する際の判断基準の一つになり、将来的に、今まで出来なかった経営や業務の効率化にも繋がることになるという箇所にも着目している点が、素晴らしいです。現状、DX化における入り口の為、この先を進めることで本当のDX化に繋がると思います。

④チェーンソーマンDX

 このプロジェクトは、林業従事者の安全と技術指導の改善を目指すものでした。林業は非常に危険な仕事であり、他産業と比べると10倍の死傷者率となっています。その危険性を伴う業務内容における、新入社員の教育環境が不十分であることが課題でした。

 当初顧客側からは、新入社員向けのマニュアルを作成して欲しいとのことでしたが、チームは現場のニーズをヒアリングし、「親方の背中で覚えろ」といった旧体質の現場から、教育環境やコミュニケーションの改善が必要であることを発見し、単なるマニュアルではなく、現場指導の手法を根本的に変えるようにしました。

 そのため、チームは練習環境の整備や従業員向けアンケートの作成、動画撮影と公開などの施策を実施しました。これらの施策により、従業員の理解度や作業効率の向上が期待されます。さらに、動画を活用した検証や指導者からのフィードバックを取り入れた日報システムの導入も行われました。

 このプロジェクトの成果として、作業効率の向上や生産性の向上が期待されます。また、今後はこの手法を社内で実践し、さらなる改善を図り、林業従事者全体の技術指導の質を向上させることが目指されます。

【審査員からの講評】

 林業だけに関わらず、親方から弟子へという作業継承において、口頭による継承だけでなく、そもそも言語化されていない「見て覚えろ」という部分が多くあります。そうすると、「受け継がれない」部分も出てきてしまう、その中で、確実にノウハウを継承する為の抜本的な解決策だと感じます。新しい作業者に対し動画と文章でフィードバックする事ができ、また、作業者毎に異なる作業時間の根本的な課題の洗い出しにも繋がり、林業だけでなく、多くの業種にも転用出来る可能性があると思います。

⑤タスクカルテ

 この「タスクカルテ」は、医療従事者向けに開発された、タスク管理と業務改善をサポートするツールです。

 医療現場では業務効率化が求められていますが、従事者はタスク管理の方法が分からずに悩まれています。また、上司からは残業削減や業務改善の指示が出される一方で、医療従事者からは上司の業務効率が低いのに、色々と言われるということに不満が蓄積されていました。

 この課題を解決するために、「タスクカルテ」では以下の機能が組み込まれています。まず、「自分で自分のタスク管理ができる」という点では、事前にタスクを登録する仕組みが用意されます。そして、「前向きの業務改善の仕方がわからない」という課題に対しては、タスクの振り返り機能を用意し、業務の良し悪しを振り返りながら改善点を見つけることができます。

 アプリを利用した効果として、予定と実績がわかることでタスク管理が改善され、業務の進捗が見える化されました。そして一番大きな点ではありますが、従事者同士や上司との対話が増え、仕事の理解が深まりました。さらに、アプリからの問いかけによる「タスク振り返り機能」の導入により、反省を言語化するだけではなく、どこにやりがいを感じているか、大変だったかという自分の感情的な面にも客観的に気づくことができ、業務の質や効率に関する気づきが生まれました。

 今後は、ユーザー毎のタスク単位の定量分析を行い、チーム内での振り返り機能を追加し、さらなる業務改善を行います。「タスクカルテ」を使って、自分の仕事を振り返りながら、仲間と共により良い組織を目指します。

【審査員からの講評】

 お互いの作業が「見えて」自分の作業内容を書けて言葉で伝えることができるだけで、感情的にならずお互いの作業を把握できれば問題にならないが、実際問題、伝達能力にも差があり、アプリで解消できるとしたら有効な手段の一つだと思います。作業が上手な人は、なぜ上手なのか、アプリを通じて解消することで、コミュニケーション増加だけでなく、会社のメリットにも繋がります。

⑥宮川農園のアプリ

 宮川農園さんは、これまでにも講座を通してDX化を推進している中で、今回は、従業員間の連携がうまくいっていない現状を打開すべく、なるべくシンプルかつ必要な情報をしっかり共有できるツールを目的とし開発を行いました。

 まず、この課題解決のプロセスで、経営者夫婦に対するインタビューが行われました。しかし、夫と妻が感じる課題や求める情報共有の基準が異なることが明らかになり、情報共有の認識の違いが浮き彫りになりました。従業員との朝礼の不備や口頭での作業指示によるミスも発生しており、効率的な業務遂行と円滑なコミュニケーションを促進する必要性が示されました。

 そこで、宮川農園では情報共有を目的としたアプリの開発が始まりました。アプリではこれまで夫が実施していた作業ログを共有する事で、連絡事項の一元化が可能になり、従業員同士のコミュニケーションや業務の効率化が図られました。また、Gmailで届く注文内容の漏れが発生していた箇所が、自動集計や未処理作業の一覧表示及びチェック対応を実施することで、経営の可視化に繋がりました。また、シンプルで使いやすい構造にしたこと、ユーザー権限と管理者権限が分岐されていることにより操作に迷わないという声もいただきました。

 このアプリの導入により、業務の効率化、受発注先の明確化、販売機会ロスの低減や伝達漏れがなくなることで、コミュニケーション不足によるトラブル解消にも繋がる見込みです。今後はLINEを活用した情報共有や戦略的な営農、人件費の見える化など、さらなる業務効率化と経営改善に取り組んでいく予定です。

【審査員からの講評】

 情報共有という点においてこのように、データが残り動画として残ることによって、来年再来年への計画や、見落としがちな注意点に対するデータも蓄積されるため、とても大事な作業だと思います。顧客の頭の中で棚卸しされずに溜まってしまう業務タスクを共有することで「見える化」し他の人がサポートできる体制に整え流ことで、今後はこの取り組みを基盤として、さらなる業績向上や改善が期待できると感じます。

発表を終えて

発表会後は1階のPacific Parlorで打ち上げ!

 どのチームも、メンバー間で話し合い見つけた実際のお困りごとに寄り添い、利用者に実際に使用していただく中で発見した新たな課題にも取り組まれており、素晴らしいサービスとなっておりました。

 この講座を通じて、単なる効率化を目指すDX化ではなく、更なる深掘りを目指しより良くするにはどうすればいいのか、行政機関や民間企業の中でDXを通し、より良い街づくりの発展につながる事を願っています。

 次はあなたの番です!!次回のDX人材育成講座の開催は夏頃を予定!
 →詳しくはこちら

 皆さんの挑戦をお待ちしております!!

 各チームの発表の詳細、卒業制作発表会の様子をアーカイブにて公開しております。ぜひご覧ください!