登壇者紹介
中村まこと
https://twitter.com/nakamakoko
登壇者
シリアルアントレプレナー・アクセラレーター・UXデザイナー
テクノロジストとして数々のスマートシティ、
シビックテックなど先進プロジェクトをリード。
日本最大級のプログラミングスクールSUNABACO代表として、
リカレント教育、次世代の教育に関わる。
今の熊本県の状況は初期のシリコンバレーのそれに似ている。
中村:1960年代くらいのシリコンバレーの半導体産業は、今の熊本にめちゃめちゃ似ています。
半導体産業ではインテルが出て、その前にフェアチャイルドっていう会社があって半導体を作り始めました。
まだ家庭用のコンピューターがない時代です。今の電卓ぐらいの性能のコンピューターが50人くらい入れる部屋くらいの大きさだった時代でした。
その時代にパーソナルなコンピューターを作ったら、人間の生活を変えるんじゃないのって言ったのが、Appleの創業者スティーブ・ジョブズです。
初期のApple
中村:Appleは最初に基盤むき出しの家庭用のパソコンを作り出しました。
スティーブ・ジョブズはシリコンバレーに住んでいて、そこには技術者がめちゃめちゃいたんです。半導体関係の研究者の家庭で育ったスティーブ・ウォズニアックとスティーブ・ジョブズがAppleを作ったんです。
スティーブ・ウォズニアックがシリコンバレーの技術者の息子で研究者だったので、巨大なコンピューターじゃなくて小さなコンピューターって作れるんじゃないのって言って作り始めたのが最初です。
小さなコンピューターを作って、小さなお店で売り始めました。最初は50台くらい売れました。
売れるためにはまず部品を仕入れないといけないじゃないですか。製品を作る部品を仕入れる為にスティーブ・ジョブスは自分が持っていたフォルクスワーゲンのビートルを売って現金化して、それで部品を仕入れて小さなコンピューターを売ったんですね。
それがすごい好評だったから、次に1000台とか2000台作ってくれみたいな話になった時にお金がなくなったんです。ニーズはあるけれど、そのニーズに答えられるだけの部品を買うお金がなかった。
シリコンバレーと熊本県北地域
中村:今は何かいろんな起業の聖地みたいに言われてるシリコンバレーですが。インテルがちっちゃい会社から大きな会社になった時に初期の立ち上げメンバーってすごいお金持ちになったんです。
そして手にしたお金で投資を始めたんです。
これがまさに映画スティーブ・ジョブズのシーンで、このガレージで作り始めてた時にお金が必要だなって言った時に、マイク・マークラっていうインテルの創業メンバーの一人が「じゃ、俺がお金を出すよ」って言って投資をしました。
この格好いい車に乗ってる人ですね。
失敗したら返さなくていいよって言って始めました。それからスティーブ・ジョブスとスティーブ・ウォズニアックが成功を手にします。
最初の成功をおさめたスティーブ・ジョブスは、アップルコンピューターから追い出されます。
あまりにも人柄が悪すぎて。その時にスティーブ・ジョブスは新しいコンピューターを作りたかったので、Appleで成功したお金でピクサーを買ったんです。
実は今のピクサーのアニメーションがあるのは、スティーブ・ジョブスが若くてコンピューターを使ったアニメーションをやりたいって言った人間に投資をしたからなんです。投資によって成功した人達がまた次の事業に投資をしていく。
マイク・マークラがお金を投資して、次の起業家として大きくなったスティーブ・ジョブスはグーグルやピクサーに投資をしてフェイスブックに投資をしました。
GAFAと呼ばれるような世界に影響力を持つような大きなIT会社がシリコンバレーにはいっぱいできてるんです。成功したら、次に投資する。
その文化がずっと連なって今のシリコンバレーになりました。
アメリカは起業が次々に生まれてくる新陳代謝みたいなものは、こういうふうなお金の流れがあって起こってるんです。
実は今熊本の県北地域ってめちゃめちゃ似ている状況にあると思うんです。時代が違うから、そのまんまそれが起こるとは限らないんだけど、そういう状況が、可能性が十分にあると思うんです。
スタートアップとは
中村:スタートアップとは何かというと、儲けが出せるポテンシャルがある会社に投資家が投資をして失敗したら返さなくていいよってお金を提供してくれるっていう仕組みがスタートアップです。
岸田内閣は経済4つの柱のうちの3つがスタートアップです。今すごく注目されています。日本の産業は新陳代謝をしなければ、これ以上伸びていかないよっていうことがいろんな指標からわかっています。
いままでは若い人が起業する時って、銀行から借りるか、知り合いから借りるか、自分でお金をためるしかなかったじゃないですか。新しい事業を起こそうと思ったら手元にお金がないとできなかったんです。
ビジネスとしてすごく良いアイディアがあっても自分でリスクを取って人や銀行から借りるとかしかなかったんですよ。
しかし、スタートアップの投資っていうのは、銀行からお金を借りるのと違って、そのアイデアに対して投資をするので、失敗したら返さなくて良いものです。会社が大きくなれば、投資をした人は大きな利益をもたらされるという仕組みがあります。
VUCAの時代
中村:今ってどんな時代になってきてるかっていうと変動制があって不確実性があって、複雑性があって曖昧性があるみたいなよくわからない時代になって来ています。
頭文字をとって略してVUCAの時代って言われています。とてつもない時代の大きな変化が来ようとしています。
なぜかっていうと、人類が体験したことがないくらい、人口減による社会の構造の変化が起ころうとしているんですよね。
人口が減ると景気が悪くなっていくし、我々の街は今までのような住民サービスを維持していくことができませんという社会になっていくんです。
なので誰も見たことがないから、何が起こるか分かんないです。
人口が減ると経済が衰退し、人口が増えると経済が成長する
中村:日本は太平洋戦争があって人口が減りました。人口が減ったところから人口が急激に増えて、景気が良くなりました。
実はよく日本がなぜこんな風に戦後復興を果たしたかみたいなお話があるんですけど、日本人の真面目さとか、製造業とか朝鮮特需とかという話がありますね。
経済は複雑で捉えにくい。単に一つの指標や理由だけで経済を語ることはできません。
ですが、一つだけ明確な事実としてわかっている事があります。
人口が減ると経済が衰退し、人口が増えると経済が成長する
熊本県の県北地域は、めちゃめちゃ人口が増えているんですよね。
こんな土地って日本では唯一熊本くらいしかないかもしれません。こうやって流入が増えて給与が上がることで人が入ってくるっていう土地。そういう土地には外からたくさん人が来ます。
世界中からめちゃめちゃ有能な人が集まってくるわけですよ。
Appleの最高経営責任者ティムクックが気になって視察にくるような都市なわけですよ。
非常に発展の可能性がある中で、まず大事なのは情報の格差がなくなるっていうのと給料が上がってるっているところが、実は消滅可能性都市が消滅しなくて済むかもしれないっていうことに繋がっていきます。
デトロイト
中村:1980年代のアメリカのデトロイトの写真です。デトロイトは当時、自動車産業でものすごく繁栄していました。アメリカは自動車や製造業で永く繁栄していくと思ってたはずです。
今のデトロイトは町中がこんな様子です。一部だけ切り取ったんじゃないです。財政破綻しています。自動車産業隆盛を極めたデトロイトがこんな風になるって想像できましたか。想像できないです。でもでわりと日本って今国中がこんな風になりがちな方向に向かって行っていると思います。
アメリカっていまだに自動車産業がダメになっても、国としてはすごい伸びてるじゃないですか。まだなぜかっていうと、アメリカは常に時代とか社会の要請に合わせて産業を変えてきたからなんです。
この製造業がめちゃくちゃ牽引していた80年代のアメリカにおいて、誰がITとか情報産業みたいなものが社会を引っ張っていってるって想像できましたか。スティーブ・ジョブズがシリコンバレーで成功をするなんて誰も想像できなかったはずです。
デジタルディバイドとは
中村:デジタルデバイドはITを使える人と使えない人との情報格差です。
インターネットの利用状況及び情報通信機器の保有と世帯年収には正の関連性があり、また今後情報へのアクセスの差がさらなる経済的な格差に結びつくっていうことがわかっています。
IT機器が家にあるかどうか。家にインターネットの回線があるかどうかで世帯の収入が変わります。もう変わってきてますっていうことははっきり分かっています。
これは総務省の調査です。予想とかではない、調査です。もうこういうことが起こっていますという話です。
ちなみに地域って家庭の集まりじゃないですか。要は情報の格差があるところ。要はインターネットとか新しいものに対して感度が低い地域はこれからどんどん仕事がなくなっていくっていうことです。
親のITリテラシーによって子供の年収が変わるっていうのは、アメリカでもデータとしてはっきりと分かっています。
さらに住む地域によって年収が変わってくるっていうことをわかっています。稼げない地域からは若い世代の人口の流出が止まらないということです。怖いですよね。めちゃめちゃ怖いと思います。
そういう中では、ITテクノロジーだけではなくて、そういう教育をちゃんとしっかり地域がやれることが非常に大事です。
豊かな地域を残すためには
中村:地域を消滅可能性都市にしない為、さらには熊本県北地域の荒尾市を今後発展させるために大事なことっていうのは、いわば情報が集まる場所にしていくことです。
今回のこういうセミナーを開催していただけるということがすごく大事だったりします。
そしてそういうことに皆さんが敏感になって話をしていくこと。インターネットリテラシーがないと収入は下がっていくんだけど、インターネットリテラシーがあれば収入は上がっていくんです。
情報、要はインターネットリテラシーって何かっていうと情報を仕入れられる力かどうか力があるかどうか。情報を仕入れる力さえあれば、実はこれから売り上げは伸びていく可能性が高いんです。
そして、これから会社を残していくためには、機械ができることは機械にさせて人間は人間しかできないことをやる。
そして次に新しい経営のために必要なことを考える。作業じゃなくて付加価値のある仕事をするのが大切です。そうすれば、給与が上がっていきますよね。
少ない人数で同じ業務ができれば、そして新たな工夫で付加価値を会社としてつける事ができれば、その分収益は上がっていくので、そのためには情報を仕入れることが必要で、収益が上がっていけば、人は確保もしやすくなります。
生き残るために、DXをなぜしないといけないかっていうと、会社がこれから人を雇用しづらくなる。人が少なくなって、若手を雇用できなくなるなってくる中で、いかに人にしかできないことをやって、そして給与体系を上げていける仕組みを作れるか。
自分たちの業務に対して新しいことができるっていう情報を常に持っていれば、他の会社を出し抜けます。
熊本県北のこの地域はこれからそういう先端の情報を持った人達がたくさん集まってきます。日本中のいろんな企業からそういう人達が注目をめっちゃしている場所なんですよ。
なのでめちゃめちゃチャンスがありますよっていうのが、実はこういう場所なんです。
SUNABACOでは
最後にSUNABACOでは、DXに関する講座を2カ月間週3日行なっています。車を作ってる日本で一番でかい会社の社員や八代市役所の職員さんと一緒に行なっていて最後は一緒にアプリまで作っています。
実際に、車を作ってる日本で一番でかい会社の工場内や八代市役所内で使われている業務改善のアプリが次々に誕生しています。
そしてもう一つプログラミングスクールをやってる2カ月間でプログラマーの入り口までいける講座を行なっています。
こないだまで事務仕事をしてた主婦さんが今はデータベースがどうのこうので、それのエラーが出たけど、ここを直したらうまくいったみたいな話を2カ月間でやれるようになってるんですよ。
これから必ずIT化が必要になってきたりとか、デジタルを分かる人間が必要な中で、
例えば業務の中でそういうことができるコンピューターサイエンスをやってる人材、パソコンを扱えてプログラミングを書ける人材ってすごい欲しいじゃないですか。
行政職員や大手企業の方や女性も実はリスキリングと言われている学び直しをやることで、組織としての戦力を高めたり、学び直しをした人材を雇用することができるようになるんです。
これからIT人口って年間70万人不足とかいう話がある中でDXを進めていく上で必要な人材確保は非常に難しくなると思います。これから地域が生き残っていく上で特に重要になってくると思います。
記事に書ききれなかった、トークイベントの全編はこちら